糖尿病のこと
2013/01/28

専門家インタビュー Vol.4 前編【糖尿病とたばこの関係性】奈良女子大学教授 京都大学医学部附属病院呼吸器内科(禁煙外来担当) 高橋 裕子先生

クリップ

Vol.4【糖尿病とたばこの関係性】
奈良女子大学教授
京都大学医学部附属病院呼吸器内科(禁煙外来担当)
高橋 裕子先生

消化器内科、糖尿病の診療経験を通して「禁煙マラソン」を築き上げた医師の高橋裕子先生。糖尿病と喫煙の医学的関係や、禁煙に成功した方の体験談からわかった禁煙のコツ、糖尿病とうまくつきあうことと禁煙との共通点について、解りやすくお話しいただきました。

たまき
知っているようで知らない糖尿病と喫煙の関係と禁煙に成功するコツについて高橋先生に色々と伺うことができました。現在タバコを吸っている方はもちろん、タバコを吸っていない方にも参考になる情報だと思いますので、是非ご一読ください。

糖尿病と「喫煙」のリスク

たまき

高橋先生は以前は糖尿病の患者さんを診ていたとうかがいました。

高橋先生

私はもともと胃カメラで胃がんを切り取ることを専門とする消化器内科の医師でしたが、長年ボランティアで1型糖尿病の子供のキャンプをお手伝していたので、糖尿病の人の悩みや苦労などを知ることができました。
38歳で慢性関節リウマチを発症し、全身の関節の痛みから長時間胃カメラを持つことが困難になってしまって糖尿病の医師に転向しました。

たまき

そうだったんですね。 糖尿病の医師になり、「たばこ」について患者さんに話す機会はありましたか?

高橋先生

糖尿病の患者さんは、お薬やインスリン注射、食事や運動など、皆さん糖尿病から起こる合併症を防ごうと一生懸命に頑張っておられます。
糖尿病の合併症はいろいろありますが、命取りになるのが心筋梗塞や脳梗塞ですよね。それと、歯周病や、肺炎などにもかかりやすくなります。
そして、これら全てが「たばこ」による悪影響をうけることがわかっています。喫煙する糖尿病患者さんの方が短期間で腎症から透析に至ってしまうというデータもあります。

たまき

いくら食事制限をしたり薬をきちんと飲んだりしても、喫煙が合併症のリスクを引き上げてしまうのですね。

意外と知らない禁煙するメリット

高橋先生

そうなんです。また、私の経験から、喫煙者はたばこの刺激に慣れてしまい、たばこを吸われていない人に比べて刺激の強い味、濃い味を好むように思います。
そうなると、お食事の塩分が高めになってしまう傾向があると思うのです。
禁煙すると、味覚がもどってきます。例えば、お米の味の違いや、大根や人参などの野菜本来の甘さが解るようになります。そうなると、自然と食生活も良くなりますよね。
もう一つ、当たり前ですが、禁煙すると呼吸が良くなり、身体が軽く感じられます。だから、運動もしやすくなる。糖尿病の方が禁煙することは非常にたくさんのプラスがあるんです!

たまき

お食事がおいしくなったり、体が軽く感じられるのは素敵ですね。でも、太ったら糖尿病になるから、たばこを吸って体重を減らしたいと考える人もいるようですが。。。

高橋先生

図1:喫煙による糖尿病発症リスク

一般的に太っていると糖尿病になりやすいようなイメージがありますよね。しかし、たばこを吸って体重を減らせば糖尿病になりにくいだろうと考えるのは大間違いです。
いくつかの研究を総合的にみて、喫煙は2型糖尿病の発症リスクを2~3倍に高め、禁煙すればリスクが下がることが報告されています。

たまき

喫煙者は2型糖尿病になりやすいんですか!?

高橋先生

そうなんです。そのメカニズムとしては、主に2つ考えられます。 1つ目は、喫煙によりホルモンバランスが乱れ、内臓脂肪が溜まりやすくなって、脂肪細胞から分泌される炎症性サイトカインが増えるために糖代謝や脂質代謝の異常を引き起こしてしまうこと。
2つ目は、たばこに含まれるニコチンの影響から、インスリン受容体の反応が悪くなり、インスリンの働きを低下させてしまうことがあります。
この他にもいくつかのメカニズムがあると考えられていて、喫煙は糖尿病のリスクを高めてしまうのです。メカニズムについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

大切なのは伝え方

たまき

では、患者さんに禁煙していただくためには、どんなお話をされるんですか?

高橋先生

私も昔は、「たばこを吸うと肺がんが増えますよ!」「糖尿病の合併症を引き起こしてしまいますよ!」と恐怖心をあおる話をしていましたが、このような伝え方では患者さんはなかなか禁煙してくださらないんですよね。
ところが、ある時期から禁煙の方法をお伝えするようにしたところ、面白いように患者さんが禁煙にチャレンジしてくださるようになりました。
また、禁煙したらいろいろと予想外に良いことがあるという情報(体調がよくなる、自由になるなど)をお伝えすると、それまで「死ぬまで吸う」と言い張っていた人たちも耳を傾けてくださるようになります。大事なのは方法であり、先の見通しだったんだと知りました。

たまき

たばこを止める方法や、その良さがわかれば、「自分にもできそうだ」とか「やってみよう」とか具体的に考えられますね。

高橋先生

その通りです。「禁煙しないのは喫煙者が悪い」のではなく、「医者の伝え方や伝える情報が悪かった」ということだったのです。
それともうひとつ、禁煙した人たちから教えてもらったことがあります。
それは、禁煙は大きな喜びであり、人生をポジテイブに生きる大きな鍵になるということです。私の外来ではじめて禁煙した人は無口な屋根職人さんでしたが、禁煙してから一生懸命に「禁煙して家族が喜んでくれた」「禁煙して仕事に集中できるようになった」と、その喜びを語ってくれました。
またある男性は、禁煙できたのだから若いころに諦めた夢に挑戦したいと、ヒマラヤ登山を成し遂げました。このような経験から、禁煙というのは単にタバコをやめるということではなくて、大きな喜びであり、その人の人生を前向きにする鍵だとわかります。
こんな大きな喜びを感じてもらえるのが禁煙なら、私は禁煙をお手伝いする医者になりたいと、禁煙外来をスタートしました。

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